令和7年度平自連自治会長研修会を開催しました。
今回は、田園調布学園大学 副学長・教授 村井 祐一氏をお招きし、「地域活動の連携・協働、個人情報の取り扱いを考える」をテーマに、地域のつながりづくり、団体間のネットワーク、また、自治会でも課題となっている個人情報の取り扱いなど、自治会(町内会)を含む地域団体が置かれている現状を踏まえご講演をいただきました。
【日 時】令和7年11月14日(金)15時00〜17時00
【会 場】平塚プレジール 6階若松
【参加数】連合会長、連合副会長、自治会長 計138名
【テーマ】「地域活動の連携・協働、個人情報の取り扱いを考える」
【講 師】学校法人調布学園 田園調布学園大学
副学長・教授 村井 祐一氏
【内 容】
〇地域活動とは何か
地域住民を中心に、自治会(町内会)、ボランティア団体、企業、学校、行政など多様な主体が自発的かつ協働で行う継続的、一時的な社会参加の実践である。目的としては、地域課題の解決、暮らしの質の向上、交流の促進などが挙げられる。
〇協働、連携とは
協働は複数の主体が、何らかの目標を共有し、ともに力を合わせて活動すること。連携は同じ目的で何事かをしようとする者たちが、連絡を密にとりあってそれを行うことをいう。
〇地域活動において連携して取組む事項について
次の5項目が、特に地域内連携を進めるために重要な事項である。
1 地域福祉、共生社会づくりのための連携
2 防犯、防災活動の充実のための連携
3 学校と地域との連携
4 文化、スポーツ、地域環境充実のための連携
5 ボランティア、募金活動等の充実のための連携
●連携・協働のまとめ
連携を進めるには、お互いの目指す理念、目的、目標、計画を可能な限り具体化させ共有する仕組みづくりが必要である。自分たちの機能、役割を知ってもらうことで他者から連携対象と認識され、期待されることになる。
また、他者を理解することで、適切な役割分担も可能となり、言葉上での連携、協働に留まらず、具体的かつ効果的な協働、連携の実現に向けて、連携対象者との相互理解を深め、頼み上手、頼まれ上手の関係になることが大切である。これまで以上に連携対象と「具体的な目標の設定・共有」、「相互理解の充実」、「積極的な情報共有体制づくり」を進めていくことが連携実現に必要な事であると考える。
〇個人情報とは
生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日、その他の記述、記録、音声、動作その他の方法を用いて表された一切を指す。
また、当該情報に含まれる氏名、生年月日、その他の記述等により、特定の個人を認識することができるものである。個人情報の成立条件に秘密属性の有無は含まれない。
〇プライバシー情報とは
次のことが挙げられる。
1 個人の私生活上の事実に関する情報
2 社会一般の人が知らない情報(非公開情報)
3 本人が公開を望まない内容の情報
プライバシー保護は、常に本人の意志を尊重しようとすることである。
〇プライバシーの侵害により起こる問題は…
・精神的・心理的ストレス(恐怖感、絶望感など)
・社会的影響(人間関係の悪化、信頼の失望)
・その他(プライバシーを悪用した脅迫や知らせた相手に対しての不信感や
怒りなど)
〇個人情報保護法とプライバシー保護の違いについて
・個人情報保護法は、個人情報を用いて活動する者が、情報を預かる者として
の責任に関する法律である。
・プライバシー保護は、本人の持ち物であるべきに関する秘密の情報は本人に
のみコントロールする権利があるという人権である。
〇守秘義務と個人情報保護について
・守秘義務は一定の職業や職務に従事する者・従事したものに対し法律の規定
に基づいて特別に課せられた、職務上知った秘密を守るべき法律上の義務で
ある。
・個人情報保護は、個人情報の適切な利用と保護を行い、個人の権利利益の保
護を行うことである。これらが混同しているため、個人情報の適正かつ効果的な活用や有用性を無視することとなり、適切な活用を妨げることになっている。
〇個人情報取得のポイントは
次のことが挙げられる
1 個人情報保護の利用目的の明確化
2 地域活動の具体的、明確化の必要性及び連携対象者、組織、団体との役割
の明確化
3 法律や条例で許可されている場合は、本人同意は不要となる。ただし、行
政などとの協定書や覚書などを取り交すことが望ましい。
4 自治会などの任意団体は、個人情報保護規定個人情報保護ポリシー等の作
成が望ましい。
5 全ては本人同意(本人の了承)が原則となる。
〇プライバシー保護と個人情報保護の境界線
・個人情報の多くは相談によって取得されることが多く、相談は「プライバシ
ー保護」と「個人情報保護」に分けられる。
プライバシー保護は、私的な相談を受け、本人の気持ちを受け止める援助活
動や相談に乗ることそのものが支援であり、問題把握や信頼関係の醸成など
が目的となる。個人情報保護としての相談は、相談中に把握された改善・解
決が必要な事項に対し、本人同意を得ながら具体的な支援を提供したり、支
援サービスへのコーディネートを行うことである。
プライバシーの一部を開示することで得られるより大きな権利・利益を考え
本人同意に基づき、個人情報として活用することが目的となる。
〇個人情報保護のポイント
・個人情報保護のポイントは、「盗難」「紛失」「誤廃棄」「目的外利用」の
4点のみである。
個人情報が多数記録されている媒体が保護の対象となり、記録媒体の取扱
い、管理方法の整理が保護の中心となる。
また、個人情報がもたらす危険に対する理解を高めると共に、適切な保管場
所への保管などを徹底する。持ち出し時のトラブル(USBの紛失など)が多
いので、個人情報を外部に持ち出しする際には十分に注意することが大切で
ある。
〇個人情報収集に関する注意点
・「情報はあればあるだけ、いつか何かの役に立つであろう」と、事情通にな
ることでの安心感を得るために利用目的を明確化させないまま取集を行う傾
向がある。本来は個人情報の収集には、利用の目的、根拠が必要なことを無
視してはいけないことを認識しておく必要がある。
〇個人情報適切利用のポイント
・利用目的が明確化されていれば自然に活用されることが想定される。
主なポイントは次の5項目となる。
1 適切な利用目的を持つ
2 徹底的に本人同意を重視する
3 適切な共有・更新方法を確立する
4 適切な保護・保管・管理方法を確立する
5 適切な利用による具体的な成果をPRする
この取組を行い、地域の安全、安心、信頼、つながりづくりに個人情報が活
用されることが大切である。
●個人情報取扱いのまとめ
個人情報は「もらい物」ではなく、「その人から預かっている形の無い預か
り物」または「その人から借りている形の無い借り物」という認識を持つこ
とが大事である。
他者から借りている大切なものであると考えれば、多くの場面において取扱
いの判断を適切に行うことが可能となる。信頼、期待されて預かった貴重な
個人情報は、活用してこそ、我々にとっても、預けてくれた方にとっても、
安心、納得できることを再認識することが重要である。
自治会(町内会)活動は地域の信頼関係や絆を醸成し、いざというときにも
支えあうことができる「地域コミュニティの形成」につながることになる。
プライバシーが守られ、個人情報が適切に活用され、効果的な連携による地
域活動の充実を目指していきたい。