令和6年度平自連自治会長研修会を開催しました。
今回は、公益財団法人山梨総合研究所 主任研究員 渡辺 たま緒氏をお招きし、「若者はなぜ自治会に入らなのか?」をテーマに、若年層にどのように地域の活動に理解、興味を持って参加してもらうかなど、自治会が置かれている現状を踏まえご講演をいただきました。
【日 時】令和6年11月1日(金)15時00〜17時00
【会 場】平塚プレジール 6階若松
【参加数】連合会長、連合副会長、自治会長 計146名
【テーマ】「若者はなぜ自治会に入らないのか?」
【講 師】公益財団法人山梨総合研究所
主任研究員 渡辺 たま緒 氏
【内 容】
●自治会の加入率は下がっているのか?
変遷から考えると、令和3度時点で平塚市70%、甲府市68.9%となっている。甲府市については、令和5年度で60%を切っており深刻な状態である。全国的にも減少傾向であるといえる。
●自治会のルーツ
町内会の成り立ちは、諸説あるが江戸時代の五人組が起源となっている。
明治に入ると、内務省の告示で従来の町会というユニットが区町村費と協議費に分散された。
区町村費は行政事務費用、協議費は祭り等の地域の費用に使用された。この際に町会という親睦組織が生まれたとされている。
1940年代に入ると、部落会、町内会整備要綱が出来、市町村の補助的組織にすると定められ、現在の自治会(町内会)へ任意組織として引き継がれている。
●現在の平塚市の地域の魅力度(持続力)について
1741団体中210位となっている。神奈川県近隣市と比べ少し低めであるが、魅力は相当あると推測される。地域の持続可能性は727位となっており、同じく近隣市にくらべ低い傾向にある。
●平塚市の自治会の運営上の困りごとのアンケート結果から考察する
〇1役員選び、2役員の高齢化、3次世代の育成、4若い世代の参加が少ない、5特定の役員しか参加しない、というものが挙げられている。
どこから着手するべきかと考えたときに、まず、若い世代の参加を促すことが重要となり、次世代の育成に繋がるものと考えられる。その結果、役員の高齢化や若い世代の不参加などが改善されていくものと思われる。
〇自治会に若者を取り組む方策として
若者の生活を知ることから始める。若者が活動できる時間を探すこと。若い人はやれる人がやればいいという考えが根底にある傾向にある。
平塚市の就労率を見ると、20歳〜50歳代の男性は100%に近く、女性も80%に近い状態で推移している。60歳〜64歳を見てもかなり高い数字である。このため、若い世代に自治会に入ってもらうにはこの就労の現実を意識しながら取り組まないとならない。
〇1世帯当たりの平塚市の人口推移
昭和30年代は4,81人であったが、令和5年に2.22人まで下がっている。全国的にみても、一人暮らしの高齢者も増加している。これらのデータをみると若者世帯は仕事や家庭に忙しく、地域まで参加するのが難しいと考えられる。
平塚市の滞在人口をデータから見ると、余り留まっていないことが判明している。そのこともあり特定の場所にいることがないことが状況として伺える。
〇平塚市総合計画の市民意識調査から考察
コミュニティ活動の推進については、余り満足もしていないが、重要とも感じていないという結果のため自治会加入率の低迷にも繋がっている。
災害に強いまちづくり、日常生活の安全・安心については、満足度は低いが重要度は高い。
この結果から、災害対策ということを第一主眼において活動をすることが一つの回答だと思う。
しかしながら、災害、防災対策はある種の保険であるため、この点にどこまで注力し活動できるのかというと中々難しい面がある。
2006年〜2007年にかけての総務省の新しいコミュニティの在り方に関する緊急会議の調査の中で、規模が小さく、付き合いが高から中の自治会では活動の参加率が高くなる調査結果がある。
また、大規模な自治会については、住民の付き合いが高い自治会は、活動の実施率も高くなり、他団体との連携も多いということに繋がっている。規模にかかわらず、付き合いが低い自治会ほど人間関係に問題を抱えている調査結果が出ている。
この結果から、自治会運営では日頃からの付き合いが大事であり、顔の見える関係を作ることが大事である。
●山梨総合研究所インターンである学生から自治会についての考え、メッセージの紹介
学生と自治会連合会の中で、協働でできることの取り組みを進めているおり、ゼミの中でも協議されている。現在の取組みやゼミの中で出た意見について紹介させていただく。
〇現在の活動として
まち歩きをと連合会長へのインタビューを中心に活動している。その中で自治会内にあるもの、ないものが見えてきた。
形があるものとしては、空き家や空き地、民家、公民館など。形がないものとして、イベント事など。
〇大学生としてなぜ自治会に参加しないのか?
検討をした結果として、コミュニティに入りづらい、情報が行き届いていない、自治会加入のメリットがない、4年間で卒業してしまうなど。
特にコミュニティに入りづらいという所では、知らない人ばかりが集まっており、関係性が出来上がっているので遠慮してしまう、一緒に行く同世代の仲間がいない、案内してくれる大人がいない、などが挙げられた。
しかし、学生が自治会行事に参加したくないと言う事では無く、地区の運動会やラジオ体操など楽しそう、という意見もあり、ポジティブな意見がとても多く見受けられた。
〇どうしたら大学生も自治会に参加できるのか?
検討した結果、ゼミとして自治会行事に参加し、実際に感じた良さや楽しさを他の学生に発信し、学生たちが自治会に参加できるよう促すことをした。
〇学生視点での困りごととして
自治会加入、地域の相談事について、どこに相談して大人の力を借りればよいのか分からない、加入希望者にもどのように情報を届けたらよいか分からない状況がある。これらを繋げられる情報発信の手段があれば良いと思う。
〇若者への自治会の受け入れ体制について
自治会側からももう少し整えてもらえるとありがたい。現状では、新しいコミュニティに入る時に、知人もおらず、ハードルも高くなり手を引いてしまうケースが多いので、入りやすい雰囲気を作っていただきたいと思う。
また、過剰に期待されすぎても困るので、程よい距離感で適度な対応をお願いしたい。
●まとめ
若者も自治会に関心がないわけではなく、加入前のワンステップが必要である。メリットを求める意見は多いがメリットはお得感ではなく、自治会だからできる地域の助け合い(地域へのあたたかさ)、行政への働き掛けによる住民生活の向上などがメリットだと感じる。
また、若者との日頃から関りを増やし、いつ、どこで、どんなことであれば自治会参加が可能なのかなど、伺い、過度の期待をすることなくコミュニティ活動に参加してもらうことにより、若者の自治会加入促進に取り組んでいただきたい。